新型コロナ感染症の緊急事態宣言が解除となり、インバウンド需要が高まってきました。インバウンドビジネスに興味を持っている方の中には以下のようなことについて気になっている方も多いのではないでしょうか。
- インバウンド需要とはそもそも何なのか
- インバウンド推移と現状について知りたい
- 2024年のインバウンドはどのような状態になるのか
本記事では、インバウンド需要についてこれまでの変遷やコロナ後にどうなるのかをデータを用いて紹介します。インバウンドビジネスに興味を持っている方は、是非参考にしてください。
インバウンド需要とは?
まず最初に紹介するのは、インバウンド需要についてです。インバウンド需要には定義や範囲があります。インバウンドビジネスに興味を持っている方は、インバウンド需要の定義や範囲を理解し、需要が見込めるビジネスを行いましょう。本章では、以下の内容に沿って紹介します。
- インバウンド需要とは?
- インバウンド需要の範囲
- インバウンドの動向
インバウンドビジネスに興味を持っている方は、まずインバウンド需要について知ることが大切です。それでは順にみていきましょう。
インバウンド需要とは?
インバウンド需要とは、海外から日本を訪れた観光客による、様々なモノやサービスへの需要のことであり、インバウンド消費と呼ばれることもあります。インバウンドは、訪日外国人客を意味しています。日本を訪れた観光客は、様々なモノやサービスを日本で購入・利用するため、外国人観光客数の増加は、日本の経済に良い影響をもたらすことになるでしょう。
インバウンド需要の範囲
外国人観光客によるインバウンド需要の範囲は、幅広いものとなっています。日本に滞在する観光客は、寝泊りや拠点として使用するホテル、移動するための飛行機や鉄道、バス、タクシーなどの交通機関、旅行の楽しみのひとつとなる食事、ショッピングなどがインバウンド需要の大部分となります。ショッピングに関しては、「爆買い」という言葉は、インバウンド需要の代名詞ともなり、ニュースで耳にした方も多いでしょう。
インバウンド需要は様々な業界で収益を左右する存在ですが、インバウンド需要をどう取り込むかが各業界の課題となっています。近年、新型コロナウイルスの流行や世界的な物価上昇など、日本を取り巻く環境は変化しています。外国人観光客の数にも影響し、インバウンド需要を左右する要因となっています。
インバウンドの動向
インバウンドの動向について、JNTO(日本政府観光局)の「日本の観光統計データ」に沿って紹介します。政府が「観光立国」を宣言し、訪日外客数の増加を目指す「ビジット・ジャパン・キャンペーン」を開始したのは2003年のことです。2003年には訪日外客数は、約520万人でしたが、2010年には約860万人にまで増加しました。しかし、2011年には、東日本大震災の影響で約620万人まで減少します。
その後は、訪日外客数は大きく上昇をはじめ、2019年には約3,200万人となり、過去最高を記録します。要因の一つとなったのが、アベノミクスです。歴史的な円高ドル安が解消され、円安方向に為替が動きました。外国人観光客から見ると、円安は日本へ旅行する際のコストを下げる要因となり、大きくインバウンドを増加させることとなったのです。LCC(格安航空会社)の路線拡大も、インバウンドを増加させる後押しとなりました。
インバウンドの推移と現状
次に紹介するのは、インバウンドの推移と現状です。インバウンド需要は長い期間を経て変化してきました。本章では、以下の3つの期間に分類して紹介します。
- コロナ禍以前のインバウンド
- コロナ禍のインバウンド
- 緊急事態宣言終了後のインバウンド
インバウンドがコロナ禍を経てどう変化したのかを中心に、見ていきましょう。
コロナ禍以前のインバウンド
コロナ禍以前のインバウンドについて、日本政府観光局(JNTO)のデータをもとに紹介します。インバウンドは1990年代から徐々に増え始め、2011年の東日本大震災により一度落ち込むものの、2019年まで急激に増加しました。
日本がインバウンドへ着目した背景として、日本の人口減少が挙げられます。平成28年版の総務省によるデータでは、日本の人口は2004年をピークに、総人口だけではなく、生産人口や出生率も減少しています。減少の流れは今後も続いていくとみられ、国内に限った事業展開の限界が見えてきました。しかし、日本以外のアジア各国の経済発展は目覚ましいものがあり、国内市場の限界を乗り越えるべく、アジア各国を新たな市場と位置づけるのは自然の流れと言えるでしょう。
コロナ禍のインバウンド
インバウンド対策が功を奏し、東日本大震災からの復興に弾みがかかった2019年末、新型コロナ感染症が世界に広がりました。2020年1月には、WHO(世界保健機関)はパンデミック宣言を発表しました。ロックダウンする都市もあり、人の行き来さえままならず、観光を始めインバウンドビジネスは暗礁に乗り上げてしまいました。
日本政府観光局(JNTO)のデータによると、コロナ前2019年の訪日外客数は31,882,049人だったのに対し、2020年には4,115,828人、2021年には245,862人となり、急激に落ち込みました。
緊急事態宣言終了後のインバウンド
緊急事態宣言終了後は、東南アジアと北米・オセアニア・中東地域からのインバウンドは増加しました。コロナ前までの回復は見られないものの、観光目的での来日が増え、インバウンド需要は着実に回復しています。今後もインバウンド需要は増加するとみられ、インバウンドビジネスに興味を持っている方は、早期に参入するのが良いでしょう。
2023年のインバウンド回復は、さらなる加速を見せています。観光庁の予測では、2023年の訪日外国人旅行者数は、前年比103.5%の3,453万人と見込まれています。 この回復の背景には、新型コロナウイルス感染症の収束や、各国の入国[…]
2024年のインバウンドはどうなる?今後の見通しを紹介
インバウンドビジネスに興味を持っている方は、2024年や今後のインバウンドがどうなるか気になりますよね。本章では、2024年のインバウンドはどうなるのか紹介します。
- インバウンド需要が高まっている
- ポップカルチャーへの関心
- 様々な業界に好影響をもたらす
- 中国のインバウンド市場動向
- 消費額はどう変化するのか
それでは順にみていきましょう。
インバウンド需要が高まっている
日本はコロナ以前、現在ともに「海外旅行をしたい国」としてトップに挙げられています。理由としては以下のものが挙げられています。
- 治安が良い
- 買い物や食事が楽しめる
- 独特の文化がある
アジアからのインバウンドにとっては「近い」という地理的要因が大きなメリットとなっています。
日本のどこを訪れたいか、何をしたいか、どのような方法で実現するかについては、コロナ以前とは違う傾向がみられます。観光庁は、令和4年度の観光白書で「新型コロナウイルス感染症の流行を契機として、密となる有名な観光地より自然環境に触れる旅先へのニーズが高まっている」と分析しています。とくに「自然環境に触れたい」というインバウンド需要は、大都市や有名観光地から地方へ目を向けることにもなっています。地方に滞在することは「蜜を避ける」だけでなく「より安く」旅行をすることにもつながります。
ポップカルチャーへの関心
「日本独自の文化を楽しむ」は、日本が旅先として人気である理由の1つですが、「文化」のジャンルとして、最近はポップアップカルチャーが大きく取り上げられるようになりました。ポップアップカルチャーとは、大衆向けの文化全般を指します。具体的には、漫画やアニメ、J-POP、ドラマなどが、等身大の日本を伝えるものとして人気を集めています。ポップカルチャー作品を知り、ファンになることで、日本の文化に興味を持ち、関連イベントに参加するインバウンドも増えています。
様々な業界に好影響をもたらす
観光による消費は、幅広い経済効果を生み、運輸業や流通業、人材派遣業などに恩恵が及んできます。全業種に関わるIT分野にも影響が及びます。コロナからの解放感や円安の影響もあり、まずは観光客の増加が注目されますが、留学・商用のインバウンドも増加していくと思われます。
中国のインバウンド市場動向
インバウンドの動向に大きく影響する航空便の回復動向をみると、全体では韓国や米国などを中心に2019年冬ダイヤと比較して84.9%まで回復しています。一方、中国については少しずつ復便も増えているものの、いまだ46.7%にとどまっています。訪日外客数と就航便数の戻りには相関関係があり、「就航便が戻れば観光客が戻ってくる」ものと思われます。今後、航空各社がどう動くかに注目しておくべきでしょう。
消費額はどう変化するのか
消費額については、2023年は2,500万人で5兆円を超えている状況なので、3,310万人となれば7〜8兆円まで届くかもしれません。ただし現在は円安のため、消費単価が高くなる傾向にあります。円高になれば消費単価も落ち着き、想定したほど消費額が伸びない可能性もあるでしょう。
インバウンドビジネスに興味を持っている方のなかには、以下のような疑問を持っている方が多いのではないでしょうか。 インバウンド需要は現在どのような状態なのか インバウンドの消費動向が知りたい […]
インバウンド需要を取り込む2つのポイント
インバウンド需要を取り込むためにはどのようなことを意識すればよいのでしょうか。本章では、以下の2つのポイントを紹介します。
- 言葉の壁をつくらない
- 訪日外国人が満足する体験を提供
それでは順にみていきましょう。
言葉の壁をつくらない
日本のインバウンド需要で課題になることの1つが、日本人スタッフと訪日外国人の言葉が通じず、意思疎通ができないことです。土地勘がない場所で、言葉が通じないと、多くの人は不安を感じます。以下の施策を通じて、言葉の壁をなるべくつくらないようにしましょう。
- 翻訳サービスを活用
- ホテルの掲示板に外国語を併記
- Webサイトの外国語対応
- 外国語対応しているスタッフを採用
訪日外国人が安心して過ごせるような場所づくりに取り組むとよいでしょう。
訪日外国人が満足する体験を提供
インバウンド需要を取り込むには、訪日外国人が満足する体験を提供しなければなりません。満足する体験を提供できないと、日本を満喫したいと考える気持ちが薄れ、1回の消費額が増えないうえに、再度訪日する可能性も低くなるからです。
訪日外国人が満足する体験を提供するために考えられる施策の例を以下に記載します。
- 気軽にインターネットを利用できるようにWi-Fi環境を用意し、周知する
- 日本食や着付け、ゲームやスポーツの聖地など、日本ならではの体験を訪日外国人に提供する
- 宗教などの理由で、人によっては食べられないものもあることを踏まえて、レストランのメニューを追加する
- クレジットカードやオンライン決済など、訪日外国人が利用しやすい決済方法を用意する
これからの日本の経済を支えるにはインバウンド市場は重要。集客を増やしていくためにはインバウンド市場に参入すべき。といった声を事業者の方であれば、一度は耳にした方も多いのではないでしょうか。 しかし、いざインバウンド市場に参入をすると[…]
まとめ
インバウンド需要は多くの施策や困難を経て、上昇を見せています。新型コロナ感染症により日本への渡航ができなかったインバウンドが、今後日本を訪問すると予想されています。訪日目的は様々ですが、日本独自の文化や買物を楽しみたいという外国人が多く、それらに対するインバウンド対策が必要となると思われます。インバウンドビジネスに興味を持っている方は、言葉の壁をつくらないことやインバウンドが満足する体験を提供することに取り組むようにしましょう。
BEENOS Travel代表取締役社長。台湾最大級のインバウンドメディア「トラベルバー」の事業責任者を務める。デプスインタビューやアンケートを活用して収集した豊富な情報を基に、最新かつ詳細な台湾情報を世界に発信している。自治体、宿泊事業者、商業施設、飲食店と台湾インバウンド関連の業務を行い、台湾の魅力を広く紹介する活動に従事している。