インバンドが活気を見せる中で、訪日台湾人の存在を忘れてはいけません。日本からも距離的に近く、多数の来訪者を抱える台湾人は、インバウンド施策で重要なターゲットです。
しかし、訪日台湾人への積極的なプロモーション活動を行う前に、台湾人のデータを深掘りし、相手のことをよく知る必要があります。本記事では訪日台湾人の基礎データや、観光における支出の内容なども把握しましょう。
訪日台湾人を誘致するには「データ」を分析する
訪日台湾人を効率的に誘致するためには、過去のデータを分析か大切です。基礎情報となる訪日台湾人の数、訪日台湾人が日本のどこを観光しているのか、日本観光における情報収集方法をチェックすることもインバウンド対策に欠かせません。
台湾人の観光データを入手したあとは、自社での活用が必要です。訪日台湾人のターゲットに合わせた観光商品を提供し、リピーターを増やしていくことに注力しましよう。
訪日台湾人の基本データ
まずは、訪日台湾人を獲得するために必要な基本データからです。東京オリンピックが開催されることが決まり、政府でも積極的にインバウンドを推し進めたことによって日本に訪れる台湾人か増加しています。
訪日観光客は10年前の5倍以上
今でこそ当たり前となったインバウンド対策ですが、日本政府観光局の「訪日外国人の推移」によると、2019年の訪日外国人の数は3,000万人を突破していますが、2010年は年間では600万人ほどでした。
わずか10年ほどで5倍以上の外国人が日本を訪れるようになり、日本国内の主力産業の1つになりつつあります。訪日台湾人に関しても、2014年は280万人でしたが、2019年には480万人まで増加しました。新型コロナウイルスによって2020年は訪日台湾人観光客を見込めないものの、2021年以降の巻き返しに期待しましょう。
2回以上のリピートが8割以上
訪日台湾人の特徴として挙げられるのが、リピート回数です。観光庁のデータによると、訪日台湾人の80%が2回以上の訪問回数があること、さらに10回以上のリピートに関しても15%と高く、1度だけでなく複数回訪れています。
訪日台湾人にリピーターが多い理由は、地理的な距離が近いことや、観光要素が都市部と地方に分散していることが挙げられます。東京と台湾は航空機で約3時間30分と短めであるのに加え、那覇と台湾に至っては片道1時間30分ほどです。
また、訪日台湾人は、東京や大阪だけでなく地方にも観光で訪れています。とくに、北海道は冬がない台湾人にとって魅力が溢れており、何度も観光してみたい場所だと考えられます。
団体よりも「個人手配」の割合が高い
訪日台湾人の観光手配方法は、団体よりも個人手配の割合が高いデータが出ています。観光庁の「訪日外国人の動向」によると、台湾人は日本旅行をする際に、27.5%が団体ツアー参加、残りの70%以上は個人手配や個人旅行用のパッケージを利用しています。
日本旅行の個人手配が多い理由として、台湾人が日本入国の際に90日間の短期滞在を希望する場合、ビザの取得が免除されていることが挙げられます。また、格安航空会社(LCC)やゲストハウスを利用することで旅費全体のコストを抑えられること、自由に訪れたい観光地を満喫するためにも、個人手配での割合が高いと考えられます。
1人当たりの平均消費金額
訪日台湾人による年間のインバウンドの消費額は、2019年に中国に次いで2番目の規模となる5,517億円を記録しています。過去5年間は大きな変動がないものの、2014年と比較すると2,000億円増加しました。
また、1人あたりの平均消費額は、過去5年間120,000円前後推移しています。台湾人が120,000円という予算のなかで、どのように消費しているかをチェックしてみましょう。
買い物と宿泊にお金を使う
訪日台湾人の日本での消費の特徴として、買い物代と宿泊代に比重を置いています。2,019年の平均旅行支出118,000円のうち、35%の40,000円は買い物代、27%の33,000円は宿泊代でした。
次いで、22%で26,000円の飲食代、11%で13,000円の交通費が全体の支出を占めており、旅行先でのホテルやお土産などにお金を使うのが訪日台湾人の消費スタイルです。
お土産は化粧品やお菓子が人気
訪日台湾人の支出のほとんどを占める買い物代にも特徴があります。観光庁のデータによると、訪日台湾人に人気の買い物ランキングの1位はお菓子類です。お菓子類の単価は約8,500円と意外にも高く、購入率においても78.1%と大多数の台湾人が購入をしています。
また、5位には化粧品・香水がランクインしており、購入者単価は16,576円と最も高い結果が出ています。訪日台湾人の日本での消費として、買い物代の割合が最も高いこと、そしてお菓子や化粧品を毎回購入するデータに留意しておきましょう。
訪日台湾人の情報収集方法
次に、訪日台湾人がどのように日本の環境情報を調べているかです。台湾人が情報を調べる際の特徴として、信頼性のある媒体を利用するといった傾向があります。
たとえば、台湾の有名人が発信している個人ブログや、旅行会社のホームページ、最近ではSNSを通しての情報収集も人気です。
台湾人はFacebook利用率が高い
台湾ではFacebookの利用率が高いことが特徴として挙げられます。日本ではあまり積極的に利用している層が少ないものの、台湾では人口の2,300万人のうち約8割がFacebookを利用しているとされています。
台湾でのFacebookの活用例として、日本企業や観光アカウントを作成し、中国語で観光情報を発信するといったマーケティング施策が人気です。とくに、公式アカウントへの信頼度は高く、フォロワーもつきやすいことから、インバウンド施策に欠かせない手法の1つと言っても過言ではありません。
インフルエンサーからの情報も参考
Facebookに次いで、台湾人の情報収集の特徴としてインフルエンサーを参考にしています。台湾ではジャンルごとに人気のブロガーが多数存在しており、日本観光をメインとしたブロガーも人気です。
インフルエンサーを活かしたインバウンド施策の取り組みとして、ブロガーに日本に来てもらい、観光を体験した内容の記事を公開する方法が採られています。信頼度が高いことや、観光体験をそのまま情報として入手できることから、効率的に台湾人に対して情報を届けられる方法です。
訪日台湾人が日本観光で期待すること
訪日台湾人を獲得するには、日本観光で期待していることに対してしっかりとニーズを満たしてあげることが重要です。近年では、北海道の人気が訪日台湾人のなかで高まっており、台湾では楽しめないスキーや冬の景色を楽しめることが要因とされています。
また、台湾人のライフスタイルにも注目してみましょう。余暇の過ごし方として、スポーツをする台湾人が増加しており、健康志向が高まっているのがポイントです。温暖な気候の台湾ですが、マラソン大会が年間数百回開催されており、日本での大会に参加する台湾人も多くいます。観光要素だけでなく、ライフスタイルを調べることで、インバウンドプロモーションにも活かすこともできます。
体験型アクティビティが人気
日本の歴史や文化を感じられる観光も台湾人にとって魅力でありますが、実際に体験してみるアクティビティも人気があります。訪日で期待することとして、ショッピングを楽しむこと、日本の料理を楽しむこと、日本人の生活を体験してみるといった体験ニーズが多様化しており、今後のインバウンドにとって考慮すべき要素です。
東京や大阪だけでなく、地方での観光重要が高まっている背景として体験型観光を楽しめることが理由の1つとして挙げられます。前述の通り北海道ではウインタースポーツを楽しめること、沖縄ではダイビングやシュノーケリングといったマリンスポーツ、福岡では地元のグルメを食べられる機会があります。
「モノ消費」から「コト消費」への変化
また、冒頭でも記述したように、台湾ではマラソンブームが広がっています。2017年には、北海道札幌市と台湾高雄市が観光交流に関する覚書締結し、その一環として札幌マラソンと高雄国際マラソンにおいて相互送客を行うことが決まりました。そのほかにも、サイクリング、キャンプ、ハイキングなど、モノ消費だけでなく、コト消費もインバウンド需要として期待できます。
まとめ
訪日台湾人へのインバウンドプロモーションを行う前に、台湾人の観光データを調べましょう。日本で観光する目的、消費金額、旅行スタイルなどを調べることで、ターゲットを絞りやすくなります。
また、効率的にプロモーションを進めるためにも、台湾人がどのようにして情報を収集しているかチェックも大切です。台湾人のライフスタイルの変化にも合わせたインバンド対策を行うことで、新たなニーズを獲得できます。
BEENOS Travel代表取締役社長。台湾最大級のインバウンドメディア「トラベルバー」の事業責任者を務める。デプスインタビューやアンケートを活用して収集した豊富な情報を基に、最新かつ詳細な台湾情報を世界に発信している。自治体、宿泊事業者、商業施設、飲食店と台湾インバウンド関連の業務を行い、台湾の魅力を広く紹介する活動に従事している。