訪日台湾人をリピーターにするために求められる対応策とは

親日家として知られる台湾人。訪日台湾人の数も年々増加し、リピーターの割合も増えています。初めて日本を訪れる台湾人観光客をリピーターにするには、またすでにリピーターになっている訪日台湾人に何度も日本に来てもらうためにはどのような点に注目し、どのような対応をしていったら良いでしょうか。当記事では、過去の訪日台湾人の動向などをみながら、アフターコロナ状況を含めた今後の対応策について解説していきます。

訪日台湾人のこれまでの傾向

日本政府観光局が発表した各年の「訪日外国客数」のデータをみると、訪日台湾人の数は2014年では282万人でしたが2019年には489万人となっており、6年間で1.7倍に増えたことがわかります。2019年の訪日外国人の全体を見てみると、訪日台湾人の数は1位の中国、2位の韓国に次いで、3番目に多くなっています。訪日台湾人が多い日本でどのような動向を示したのか、更に詳しい内容を調べてみましょう。

訪日台湾人の訪日データ概要

訪日台湾人が訪れる時期は年間を通して、ある程度一定していて、4月~7月ではその数が増加し、12~1月に最も少なくなる傾向があります。12~1月に減少するのは、台湾の気候が亜熱帯気候であるため、気温がかなり下がる日本の冬には順応しにくく、また、スキーやスノーボードを楽しむ人が少ないことが理由になっているのではないかと考えられます。

2019年の訪日台湾人を男女別に見ると、男性が44%で女性が56%となっています。これらの割合を韓国と比べると、訪日韓国人は男性が59%、女性が41%となっており、訪日台湾人では、女性の方に旅行意欲が強いことが分かります。また、年代別では、男女とも、最も多いのが30~39歳、次が20~29歳、そして40~49歳の順番になっています。

2019年の平均宿泊数は6.1日。旅行形態は個別手配によるものが62.9%で最も多く、次が団体ツアーの27.5%、そして最後が個人旅行パッケージの9.6%になっています。それは、やはりインターネット上の情報が充実しつつあることで、情報の入手が簡単になり予約がしやすくなったことが大きな要因だと考えられますが、同時に集団行動が多い日本旅行者と比べると台湾人は個人主義がより強いためではないかと考えられます。

訪日台湾人の親日性

台湾を訪れたことのある人なら気づかれたと思いますが、台湾人は日本人に対して大変友好的かつ親切な態度で接してくれます。台湾の各都市にも日本と関係のある文化が多数存在します。日本料理店を初め、おにぎり、おでんなど日本の食べ物も販売されており、駅やデパートでも日本的な要素を取り入れたインテリアなども目につきます。

2018年に電通が行った「ジャパンブランド調査2018」の調査結果によると、台湾は、「日本への好感度ランキング」でベトナム、フィリピン、タイと並んで1位となっています。特に2017年と2018年を比べた場合、ベトナム、フィリピン、タイでは、日本への好感度がわずかながら下がっているのに対し、台湾の日本への好感度は3%上がっているのが特徴的です。

訪日台湾人の消費動向

そうした文化的背景を持つ訪日台湾人は、日本ではどのようなモノ・コトにお金を使っているのでしょうか。観光庁が発表した「訪日外国人の消費動向2019年 年次報告書」によると、訪日台湾人が消費した項目の中で最も多かったのが買い物で、全体の消費額の33%を占めています。買い物のトップ5を挙げると、1位が菓子類78.1%、2位医薬品57.1%、3位その他の食料品・たばこ44.2%、4 位衣類39.6%、5位化粧品・香水38.4%の順になっています。なお、この質問では複数の回答が許されています。このように買い物に使う費用が全旅行経費の約1/3を占めるということは、訪日台湾人には「爆買」の傾向があるということになるのではないでしょうか。

このことは、訪日台湾人が観光やレジャーに使う費用と比べると良く分かります。訪日台湾人が観光やレジャーに使う消費額はわずか4.2%。その少ない消費の中でも、お金を落としている内容を調べてみると、旅館(ホテルではなく)での宿泊34.5%、美術館・博物館38.6%、温泉28.7%、日本酒の飲酒27.2%、歴史・文化体験23.6%となります。

訪日台湾人リピーターにとっての日本の魅力

先にも触れましたが、台湾人は親日家であり、そのために日本へのリピーター数も多くなっています。リピーターには10回以上の訪日を経験している人もいますが、最も多いのが2~9回のリピーターです。ここでは、この2~9回のリピーターと10回以上のリピーターを一括りに「2回以上のリピーター」と呼ぶことにして話を進めていきたいと思います。

訪日台湾人リピーターが日本観光に求めるもの

前のところで訪日台湾人がどんな観光やレジャーに関心を持って体験しているのかそのデータを紹介しました。2回以上のリピーターになると、先に上げた5つの体験、「旅館での宿泊」「美術館・博物館」「温泉」「日本酒の飲酒」「歴史・文化体験」の中で、特に温泉と日本酒の飲酒がそれぞれ9%、4%と増えています。さらに、これら5つの体験以外に、「日常生活の体験」が、1回目の訪日と比べると6%以上増えています。

このことから、2回以上のリピーターになると、より日本的な体験、しかも日常的な体験を求めていることがわかります。こうした傾向は日本のテレビ番組やアニメなどの影響で、日本の生活を体験することによってさらに深く理解したいと考える人が増えているためだと分析できます。

訪日台湾人リピーターが求める日常的体験とは

では、日常的体験とは、具体的にどのようなものをさすのでしょうか。

その一つが一般の家庭で体験できる料理教室です。この体験では、日本料理の作り方を学ぶだけでなく、一般的な日本人に接し文化交流を行い、更には日本の家庭がどのようなものであるかを知ることができます。

また、買い物においても、東京の銀座や原宿など名の知れた街で買い物をするのではなく、一般的な日本人が買い物する下町の商店街で買い物をしたり、食事をしたりすることも日常的体験だと言えます。

訪日台湾人リピーターが満足するもの

実際に観光した訪日台湾人リピーターは日本のどんなところに満足しているのでしょうか。ここに、株式会社ネオマーケティングが2019年に訪日台湾人400人を対象に行った調査があります。この調査では、約80%が2回以上のリピーターになっています。調査結果の「満足」と「やや満足」を合わせた回答でみてみると、1位が清潔感で95.6%、次に風景・景色94%、グルメ93.3%、治安90.5%、ショッピング89.3と続きます。そしてその後に、人間性と温泉が満足度の高い評価となっています。

訪日台湾人をリピーターにするための具体的対応

これまでのデータで、訪日台湾人がどのようなことに興味・関心を持っているかお分かりいただけたかと思いますが、実際にリピーターに、しかも2回や3回ではなくそれ以上に日本に足を運んでもらうようにするには、具体的な対応策が必要になります。

リピーターの旅行形態から考える対応策

「令和元年訪日外国人消費動向調査」によると、訪日台湾人の同行者の状況を来訪回数で見た場合、1回、2~9回、10回以上では、家族・親族との旅行がどの回数でも50%以上あり、最も多いのですが、リピート数が増えると一人旅の割合が増えています。具体的には1回目の訪日では一人旅は5.4%であるのに対し、2~9回のリピーターでは9.2%、10回以上では21.3%になっています。このことから、訪日回数が増えるにつれて、個人の好みがはっきりするようになり、また日本国内での旅の仕方にも慣れてくるため、一人で自分の関心のある所に自由に出かけ好きなことを体験するという傾向があることがわかります。

またインターネットの発達で、旅の情報の入手や各種予約がオンラインで比較的簡単にできるため、旅行形態も1回目でさえ、団体ツアーの割合は27.5%しかなく、62.9%は個別手配をしていることがわかります。このように旅行会社を通さず個人で旅をアレンジして旅行する人をFIT(個人旅行者)と呼んでいます。

FITの求めるものへの対応策

このFITの求めるものを提供できるようにするには、インターネット上でいかに役に立つ情報をより多く提供できるかがリピーターの確保に重要であるということになります。ネット上の情報では、効率よくその地域の見どころを訪ねたり、様々なアクティビティーが体験できたりできるように、モデルコースを数多く紹介し、必要なものはネット上で簡単に予約できるようにすることが求められるでしょう。

また、FITでは、オプショナルツアーを利用する人も増えますから、その場合に英語や中国語を話せるガイドを付けたり、音声を流したりなどの対応も大切でしょう。せっかく訪日台湾人をオプショナルツアーに確保できても、言葉が通じないと高い評価をもらうことはできません。

リピーターの訪問地域から考える対応策

訪日台湾人のリピーターの特徴には、訪れる場所にも1回目の訪日台湾人とは異なる特徴が見られます。日本の各地域を千葉・埼玉・東京・神奈川・愛知・京都・大阪・兵庫を一つにした「三大都市圏」とし、その他を「地方」として区別し、2018年と2019年でその増減の変化を調べた調査結果があります。1回目の訪日台湾人では地方を旅した人は96.5%でしたが2回以上のリピーターになると115.6%となっており、これらの数値から、リピーターの関心が三大都市圏から地方に移っていることがわかります。この傾向は中国を除く他国からの訪日客すべての動向にもみられますが、訪日台湾人においては1回目と2回以上のリピーターの差が19.1%あり、地方への関心が他の訪日外国人よりも強くなっています。

では、訪日台湾人は地方の中でどの地域に足を運んでいるのでしょうか。

訪日台湾人が1回目の旅行で最も多く訪れたのは、「三大都市圏、沖縄、北海道、奈良、岐阜」となっています。2~9回目のリピーターでは「三大都市圏、沖縄、北海道、奈良、福岡」となっており、さらに10回以上のリピーターになると、これらに長野県が加わっています。このデーターから特記すべきは、訪日台湾人リピーターでは福岡県と長野県への関心が高まっていることです。このような地方への関心の高まりは、今後も強くなって行くことが期待されます。そのため、訪日台湾人に来てもらうには、さらに多くの地方の観光内容を充実していくことが求められています。

リピーターの関心内容を示すデータ

リピート数が増加するにつれて出費額が増える傾向があります。その内のトップ3をあげると、舞台・音楽鑑賞、温泉、衣類になります。

特に舞台・音楽鑑賞、温泉などはリピーターの消費額が多くなる傾向が強く、これらへの出費は2~9回のリピーターではわずかながら下がるのですが、10回以上のリピーターになると、一気に2倍になります。

温泉への消費は1回目が全体消費の1.5%ですが、2~9回のリピーターでは2.5%、10回以上になると2.7%と上昇します。

また衣類への消費は、1回目から37.1%と高いのですが、リピート数を重ねるにつれて2~9回では40.3%、10回以上では46.7%と高くなっています。

上記3種類のレジャーの中で、舞台・音楽鑑賞は、言葉が通じなくても楽しむことができること、そして夜の時間(ナイトライフ)を楽しく過ごすためにお金を落とす人が多いため、大きな消費が期待できます。

ただし、舞台・音楽鑑賞、温泉、衣類における消費だけを考えると限られてしまうので、こうしたことに関連した別のサービスを提供できるとさらに良いでしょう。具体的には舞台や音楽鑑賞後のレストランでの食事、関連グッズの販売、外湯で温泉体験、温泉巡りのモデルコース紹介、地元の風物詩を描いた浴衣の販売などが考えられます。

リピーターの関心内容から考える対応策

ここから見えてくるリピーター獲得の対応策としては、より詳しい魅惑的な情報を提供することにより、能や音楽のコンサートなどへの誘導を図ること、また各温泉地域で他とは異なる温泉体験ができるような差別化を図ることなどが考えられます。特に、リピート回数が増えるにしたがって地方への関心が高まるため、温泉体験を各地方の伝統芸能や伝統工芸などと結び付けるといったプランを提供するのが良いでしょう。

衣類に関しては、すでに日本のアパレルはアジアの国でも評判が高いのですが、同時に伝統的な民族衣装である着物への関心も高まっていることも知られています。それは、各観光スポットで、数多くの訪日外国人が着物を着て散策している様子を見てもわかると思います。また、着物は新品では高価であるため、リユースの着物にも人気が集まっています。例えば、浅草のある着物リユース業者によると、購入する人の約30%は外国人だそうで、台湾やアジアからの訪日客では赤や黄色の派手な色柄の着物が人気を呼んでいるとの報告もあります。

訪日台湾人へのアフターコロナ対応

2020年は新型コロナの影響で、観光業は大変大きな打撃を受けました。その一方で台湾はいち早くコロナを収束した国であり、それだけに現在の旅行意欲も高まっていると考えられますが、実際にはどのように考えているのでしょうか。

日本インバウンド・メディア・コンソーシアムが、インターネットで450人を対象にして行い2020年5月に発表した「台湾人最新訪日意識調査」によると、54%が「台湾政府が安全宣言を出したら行っても良い」と回答していますが、同時に「1年以内は行かない」と答えた人も21%で2番目に多い回答結果となっています。このことから台湾人の慎重さと安全志向が窺われます。訪日台湾人を受け入れる側には、こうした訪日台湾人の不安を払拭するような安全策を実施し、アピールしていくことが求められるでしょう。

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