訪日外国人旅行者数はコロナ禍前を大きく下回っていますが、各航空会社は日本と台湾間の国際線を増便し、新たな航空会社も参入しています。水際措置の緩和以降、「日本への旅行」の検索需要が急増しており、今後、日本と台湾間の旅行がより活発になることが予想されます。
2022年後半、各国は経済活動の再開に向けて外国人観光客の受け入れを加速させています。日本は10月11日から入国者数の上限をほぼ撤廃します。インバウンド需要拡大に向けた様々な施策が計画されており、自治体や民間企業も力を入れ始めています。今回はインバウンドの現状をコロナ前と現在を比較しながら紹介します。
訪日台湾人観光客の推移
日本政府は2020年の訪日外国人旅行者数を4000万人にする目標を掲げていましたが、新型コロナウイルスの影響で実際は412万人と目標を大幅に下回りました。その後、目標人数の変更に注目が集まる中、政府は2030年に訪日外国人6000万人という目標を掲げました。
確かに、2022 年 7 月までに訪日外国人旅行者数は 2021 年に比べて約 2.5 倍の 65 万人に増加しましたが、回復の傾向が非常に遅いことがわかります。同様に、台湾人の数は 2021 年には 5,000 人に過ぎず、COVID-19 以前の数の 0.1% になります。しかし、日本と台湾の間には、航空会社の増便や台湾の新しい航空会社であるスターラックス航空の設立など、明るい兆しがあり今後はかなり期待が持てます。
訪日台湾人の特徴
では、台湾の人々の日本への旅行に対する実際の欲求はどうだろうか? 日本台湾交流協会の2021年の調査によると、89%の台湾人が日本に行きたいと答えています。 COVID-19前でも90%だったことを考えると、COVID-19前後を問わず日本への旅行意欲は依然として高いことがわかります。
一方、Google Trendsのデータによると、日本政府が水際措置の緩和を発表した2022年5月頃から、「日本への旅行」の検索需要が徐々に増加しています。 その後、日本政府が入国制限の撤廃と個人旅行の解禁を発表したことで、今年は検索需要が過去最高を記録しました。 このことからも、台湾の人々は新型コロナウイルス以前と同様に、日本への旅行に関する情報に敏感であると言えます。
2022年10月20日現在の最新の入国規制をみると、 日本は1日あたりの入国制限を撤廃し、台湾は1週間あたり15万人の入国制限を設けました。
また、両国とも日本入国後の水際措置を緩和しています。多くの旅行者はPCR検査証明書を提出する必要があり、時間と費用がかかりますが、日本と台湾は原則として必要ありません。 日本の場合はWHOが掲げるワクチンの3回接種の証明書が必要となりますので、 予防接種証明書をお持ちでない方は、従来通りプレPCR検査証明書の提出が必要となります。
訪日台湾人観光客の観光理由
台湾人が日本を愛し、日本文化が広まっていることは周知の事実ですが、台湾人自身は日本の観光に対する熱意に懐疑的です。台湾の新聞、United News は、台湾最大の非営利電子掲示板である PTT の投稿を分析し、台湾の人々が日本での観光を愛していることを発見しました。
PTT の投稿では、「海外旅行となると、ほとんどの台湾人は迷わず日本を選びます」。 台湾人と出会う確率は、香港、韓国、東南アジア、ヨーロッパ、アメリカよりもはるかに高いですです」。
「文化財や遺跡がしっかり守られている」「香港や韓国よりも自然・文化・景観が優れている」「漢字があるので英語が話せない台湾人でもわかる」などのコメントも寄せられており、「アジア文明の頂点。アジアで日本に行かずにどこへ行くのか」などの日本を賞賛するコメントも多く見受けられます。
別の報道機関である産立新聞も同様の分析記事を掲載し、「台湾人はなぜそんなに日本に行きたいのか」というタイトルの PTT スレッドを紹介しました。 ある投稿者は「焼肉、寿司、ラーメンなどの日本食はすべて台湾にある」と述べたが、「街の清潔さなど、それらを取り巻く環境だけは真似できない」と指摘した。 「日本は電車の数で台湾に勝っています。台湾では、台北を除いて、ほとんどの郡や都市に地下鉄や電車がないか、ほとんどありません。」
しかし、台湾人が日本への訪問を好むのには、実際的な理由があるようです。 台北市在住の 60 代の女性店主によると、台湾人は海外旅行では食事と買い物を何よりも重視しており、日本への旅行ではどちらも満足できるとのことです。 日本に買い物に来る台湾人は、化粧品や洋服だけでなく、周囲から頼まれて炊飯器や市販薬(アリナミン製薬のアリナミンが人気)などの家電製品も購入するそうです。
また、女性店主によると、新型コロナ前は最近ほど円安にはなっていないが、安さはすでに日本観光の大きな魅力であり、思いっきり買い物を楽しむことができたという。 特に、高級ホテルの宿泊費は台湾よりもはるかに安いです。
台湾の報道機関によると、COVID-19の前から、「台湾人はなぜそんなに日本に行きたいのですか?」 に対して、すぐに多数のコメントが寄せられました。 「お金もないし休みも少ない」「(日本を選んだ理由は)心も体も休まる」などかなりリアルな発言が相次ぎました。
「旅費よりも、休暇が取れないことだ。スイスに行けば、飛行機で2日無駄になる」。 また、日本の観光の魅力の一つとして、観光都市の近さについての記述もありました。
さらに、「コストパフォーマンスが最高」「日本の最大の魅力はチップが一切いらないところ」。 結局、吉野家の牛丼のように「うまい、簡単、早い」が日本を選ぶ本当の理由なのかもしれません。
PTTを利用する若者にとっては経済性が最優先ですが、余裕のある中高年層の多くはリピーターです。 台北市に住む60代の社長は、コロナ以前は年に数回、妻と日本旅行を楽しんでいたようです。
経済的な理由から、ほぼ毎年訪れているのは日本だけで、特に京都と大阪が好きだそうです。
「台湾での生活は忙しい」のですが 意外なことに、日本は台湾よりのんびりしているようです。
つまり、台湾人にとって日本観光は国内旅行のような気軽な旅であり、経済状況やスケジュールに合わせて楽しんでいるのです。
訪日台湾人に人気の観光地
観光地ランキング1位は富士山。 次は「東京ディズニーリゾート」、3位は「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」、4位は「立山黒部アルペンルート」。 ランキング外だが4位と同エリアの「雪の大谷」にも票が入り、「立山黒部アルペンルート」の認知度は高いです。 「上高地」や「奥入瀬渓流」も上位にランクインしており、風景や自然景観に魅力を感じている人、にぎやかな場所で遊べる場所を求めている人が多いことがうかがえます。
「人気観光地名ランキング」では、大阪が1位、京都、富士山、舞浜、青森と続きます。 5位にランクインした青森県は東北地方で最も認知度が高く、日本=青森県、青森県の美味しいりんごのイメージが強い 台湾の観光を積極的に宣伝しています。 さらに「『青森』という地名の漢字は美しいと感じます。そのため、『青森=東北の自然の風景』というイメージがあるかもしれません」。 東北エリアでは「銀山」が15位、「仙台」が20位。 九州エリアでは「福岡」が8位、「熊本」が16位、「鹿児島」が18位。
認知度が優先するようですが、その土地の景観や風情、口コミが影響しているようです。
「人気都道府県ランキング」では北海道が1位。 北海道の地名や市区町村名を挙げた人は16%、「北海道」だけを挙げた人もいます。 雪の少ない台湾に住む人は雪景色に憧れますが、夏の花や美味しい海の幸も人気です。 2 位は東京、3 位は京都、大阪、沖縄の順でした。やはり台湾人にとって北海道は安らぎの場所と言えるので人気があると思います。
全体的な感想は、「ランキングの高いエリアは個性的な観光スポットがあるエリアとして魅力的で、今後も観光客が来てくれると思います」。 それぞれの持ち味をいかに引き出すかアピールできるかが重要なポイントです。
訪日台湾人の平均滞在日数
台湾人旅行者の平均滞在日数は、4~6日が73.1%、7~13日が22.0%で、いずれも9割以上を占めています。 3日以下の短期滞在が多い韓国(29.9%)に対し、3日以下の短期滞在は2.8%にとどまっています。
22年アジアのインバウンド観光客の推移
日本政府観光局(JNTO)は8月17日、2022年7月の訪日外国人旅行者数(推計)が14万4500人と発表しました。
前年同月比では183%増、新型コロナウイルス感染症の影響前の2019年同月比では95.2%減に相当します。
単月での訪日外国人旅行者数が10万人を超えたのは4月以来4ヶ月連続です。 6月から2万4000人増えたものの、5月の14万7046人(暫定値)にはまだ及ばないです。 観光客の受け入れを再開してから2か月が経過し、訪日外国人旅行者の増加が期待されたものの、外国人観光客の受け入れ効果はまだ見られません。 Yamatogokoro.jp のインタビューでは、これまで個人旅行が主流だったアジアやヨーロッパ市場では、団体旅行よりも個人旅行の再開後に訪日を検討している人が多いです。 入国前のPCR検査やビザの取得、団体旅行のみなどの条件が影響しそうです。
7月の訪日旅行者数を単純日割りで計算すると4,661人/日となり、6月に引き上げられた1日あたりの入場者数制限2万人を大きく下回ります。
2022年1月から7月までの累計は652,100件で、2019年比96.7%減(2020年比342.6%増)。
同日に発表された2022年5月の訪日外国人旅行者数(暫定値)は147,046人で、うち観光客は7,308人。
また、8月10日現在、入国を希望する新規外国人観光客数(移民健康確認制度(ERFS)への申請件数)は、8月12日から31日までの内訳で14,952人、 9月1日~30日:4730人、10月以降:2810人。
訪日外国人旅行者数は伸び悩みましたが、日本人のアウトバウンド旅行者数は6月から10万人増加し、27万7900人となりました。 2019年同月比83.3%減、前年同月比543.5%増。 理由としては、入国制限を緩和・撤廃する国・地域が増えたことや、帰国後の待機期間が見直され、渡航しやすくなったことが挙げられます。 また、これまで運休や減便が続いていた各市場からの便数も、前年同月に比べて回復傾向にあります。
7月の市場別訪問者数を見ると、上位5位はベトナム2万2700人、韓国2万400人、中国1万4800人、米国1万4100人、フィリピン6900人。 ベトナムは、コロナウイルス危機以前の50%以上に戻り、他の国や地域に比べて大幅に改善しています。
中国人観光客の推移
パンデミック前、中国人は訪日外国人旅行者の 3 分の 1 を占めていましたが、現在は21,500 人に減少し全体の 4% となっています。 観光業界は中国人観光客の復活に大きな期待を寄せているが、中国政府は「新型コロナウイルスゼロ政策」を堅持する見通しであり、近い将来、多くの訪日外国人が訪れる可能性が高いです。
韓国人観光客の推移
韓国人の年間海外渡航者数は、2010年から2019年まで増加し続けたものの、2020年には急激に減少しました。すなわち、2019年は247956人で2021年は1100人と急減します。
アメリカ人観光客の推移
アメリカ人観光客は2019年144498人で、2021年1000人です。ほんとどの観光客がリピートでアメリカにはない日本独自のものにひかれるようです。
イギリス人観光客の推移
イギリス人観光客は、2019年27750人で、2021年200人です。2019年には団体客や新規観光客が多かったのですが、2021年はリピートが大半でした。
2022年訪日台湾人の受け入れ態勢
円安による購買力向上があげられます。2022年9月中旬に日本に入国するアメリカ人はPCR検査を必要とせず、ビザが必要でした。 グループは出発の1か月前に満席になりましたが、実際に日本を訪れたのは定員の半分だけです。 日本での新型コロナ感染症の流行で、スーツケースの荷造りが終わったのに、医者に止められて諦めざるを得なかった人が多かったと聞きました。 しかし、やむを得ず諦めた方のほとんどが別の日程での来日を検討しており、日本への関心の高さがうかがえます。
ツアー参加者の内訳は、新型コロナウイルス感染症の影響で日本への渡航を複数回延期した方、インドへの渡航を予定していたが、新型コロナウイルスの影響による受け入れ中止により日本への渡航予定を変更した方、今年すでに3回目の海外旅行をされている方です。 どちらの場合も、日本なら安全・安心に旅行できると思っている人が多かったようです。
コロナ禍前との違いは、円安の影響もあり圧倒的な購買力です。 海外旅行に行けない間に貯めたお金と、物を買いたいという気持ちが支えになり、「ここのおすすめは?」とよく聞かれます。 物販だけでなく、飲食や体験プランに価値があると思えば2万円以上の会食や高価な劇場の席などを求める人も多く、総じて財布の紐はゆるいです。
また、観光客も少なく静かな日本旅行を楽しんでおり、京都・嵐山の竹林で「今回、日本に旅行できて本当に良かった」と記念撮影をしている姿が印象的でした。
日本が選ばれるように努力しなければならない点もあります。
以前は、日本への渡航条件はビザ、PCR検査、添乗員付きの団体旅行のみでした。 違いを感じました。 厳しい制限下でも日本に行きたいと思った人は、お金がかかっても日本に行きたいという思いが強い人もおられ、3回目以上の訪日者やこの時期しか行けない人などが特徴です。
10月11日、新型コロナウイルスに対する日本政府の水際対策がさらに緩和されました。 1日5万人の入国制限が解除され、入国審査が原則廃止されます。 外国人観光客の個人旅行も解禁。 これまで感じたことからすると、「日本に夢中」な人はさらに薄れ、「海外旅行に憧れる」人は動き出すと思います。
巨大な市場である中国を離れるにはしばらく時間がかかりますが、他のアジア地域は徐々に日本への旅行を再開しています。 香港では、香港に戻った後、ホテルの隔離が不十分なため、航空会社のオンライン予約が一時的にパンクしたことが報告されています。
アジアだけでなく、欧米やオーストラリアでも、単価の高い観光客の海外旅行熱をいかに日本につなげるかが、インバウンド業界の喫緊の課題です。
今後の訪日観光客数の増減について
これまで見てきたように、訪日外国人旅行者は、北海道、京都、沖縄などの有名な観光地に加え、認知度が高く、観光資源が豊富で利便性の高い東京や大阪などの大都市を訪れる傾向があります。しかし、インバウンド需要は地域格差が大きいです。 経済発展に伴い、世界の観光需要は今後も拡大が見込まれ、特に大きな市場である中国が近くにあることもあり、日本全体を訪れる外国人旅行者数は今後も増加していくことが見込まれています。 しかし、関連産業の育成や地方創生などのインバウンド需要の効果が全国に波及するためには、外国人観光客が有名観光地以上に訪れる必要があります。
潜在成長圏(延べ宿泊者数上位5県を除く42都道府県)を訪れた外国人観光客を分析すると、旅館や温泉、スポーツを体験したことがある人は、 スキーなどが増えています。地域ごとに多様な観光資源を活用し、外国人が楽しめる「コト消費」を提供することが重要であることが明らかになりました。 また、潜在成長地域を訪れた旅行者は、再び訪日したいという気持ちが強い傾向にあることがわかり、訪日リピーターがより潜在成長地域を訪れるようになるという好循環が期待できることがわかります。
一方で、成長が見込める地域の観光資源の魅力を発信する場合、インターネットを利用した広報には特有の問題があります。 また、ファミリー旅行者が旅行しやすい環境整備や、自然観光や景勝地・自然体験などの観光サービスも改善の余地はあるものの、観光客の再来訪意欲には結びつかないでしょう。
査証免除などの訪日促進策が功を奏して、 訪日外国人旅行者数や訪日外国人旅行者の消費額を増やし続けるためには、こうした取り組みを継続することが重要です。 その際、中国人観光客の多さと一人当たりの消費量の多さが、日本のインバウンド需要に大きな影響を与えることに留意する必要があります。
現在インバウンド需要が十分に取り込めていない地域で、より多くの外国人旅行者を訪日させるためには、外国人旅行者のニーズを的確に把握し、各エリアが提供できる未知なる魅力的な観光資源を開発する必要があります。 情報を整備した上で、広報方法を工夫しながら認知度向上に努めていくことが期待されます。
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BEENOS Travel代表取締役社長。台湾最大級のインバウンドメディア「トラベルバー」の事業責任者を務める。デプスインタビューやアンケートを活用して収集した豊富な情報を基に、最新かつ詳細な台湾情報を世界に発信している。自治体、宿泊事業者、商業施設、飲食店と台湾インバウンド関連の業務を行い、台湾の魅力を広く紹介する活動に従事している。