訪日台湾人インバウンドの傾向と特徴
コロナ前の2019年まで訪日観光台湾人の数は右肩上がりを推移し増大傾向にありました。訪日外国人の中でも中国に次いで台湾からの入国は2番目に多い数字となっています。
台湾人の世界各国への訪問者数を見ても、日本は中国に次いで2番目に多く台湾の中でも人気の国となっており、他の訪日外国人に比べると台湾からのリピーター率が断突に高く2019年の統計では訪日回数6~9回が17.4%と最多となっており日本に関心が高いことがうかがえます。
コロナが収束したらどこへ行きたいですか?の質問に対し、「日本!」と答える台湾人も多いようです。2019年の日本政府観光局(JNTO)データによると、2019年の訪日外国人ランキング1〜3位は1位中国、2位韓国、3位台湾となっております。具体的な人数で見てみると、1位の中国が959万人、2位の韓国は558万人、3位の台湾からは489万人もの人が2019年コロナウイルス拡大前は日本を訪れていました。
人数だけ見ると中国が頭一つ抜き出ているのが分かりますが、ここで人口比を見てみたいと思います。
1位の中国の総人口は、約14億人です。そのうちの959万人が訪日。国民の0.6%にあたります。2位の韓国は総人口約5,127万人です。そのうちの558万人が訪日。国民の10%にあたります。3位の台湾はというと、総人口2378万人です。そのうち489万人が訪日。なんと国民の20%、つまり5人に1人が日本を訪れてくれていることが分かります。
参考:
外務省 中華人民共和国(People’s Republic of China) 基礎データ
外務省 大韓民国(Republic of Korea) 基礎データ
また、2023年1月18日付けの日本政府観光局の資料によると、台湾と日本国内を結ぶ国際線は桃園〜成田間、松山〜羽田間の増便などもあり、日本への直行便数は前年同月に比べ回復 傾向にあります。
より日本を訪れやすくなったと言えます。
2022年訪日台湾人インバウンド市場傾向
2022年の訪日台湾陣の観光目的としてはこれまでとの変化は少なく
1位 日本食を食べる
2位 ショッピング
3位 繁華街を散策
4位 自然・景勝地への観光
この4つが大部分を占めています。
具体的な内容としましては
1位の日本食では、ラーメン、とんかつ、焼肉
2位のショッピングでは、ドラッグストア、ドン・キホーテ、家電量販店
3位の繁華街は東京・大阪・千葉が都内からアクセスしやすく人気
4位の観光は浅草寺、清水寺といった人気エリアはもちろんのこと、富士山や立山黒部アルペンルート、白川郷も人気でした。
訪日台湾人観光客の特徴
過去日本がインフラを整えた事もあり、親日家が多いことは一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。日本と台湾の両国民のお互いに対する印象を、さらに押し上げる要因としては災害義援金のエピソードがあります。
2014年12月31日までに日本に送られた台湾からの義援金はおよそ253億円に上ります。外交上の問題で、日本政府から台湾への正式な感謝の意をのべることができなかったため、日本人の女性デザイナーがSNS上で呼びかけたことから、台湾への感謝を伝えるための広告やCMが有志でつくられ、民間で台湾にお返しをしよう。という運動が起こりました。
実際に台湾の地方紙や、テレビで使われ、それを見た台湾人から感謝のコメントが寄せられました。民間から自主的に声が上がるなんて素敵ですよね。日本と台湾だからこそできたエピソードではないでしょうか。また儒教の教えが浸透しているため目上の人を敬う文化であります。「相手に譲る」という想いが生活の中で実践されていて、電車の優先席は高齢者が座らない限りは空席のままで、優先席であろうが、普通席であろうが、若者は積極的に座ろうとしないそうです。そして、家族との繋がりが強くとても仲が良いそうです。
台湾人の多くが健康意識が高く日本の医薬品にも関心があり、台湾で売られている物と同じ商品でも「日本のものは成分が若干違っているから」と日本に来たさいには購入品リストを持ってドラッグストアへ買い物に行くそうです。
他国と比べリピーターで日本に訪れることが多い訪日台湾人ですが、日本慣れしているリピーターは定番の観光地よりも穴場的なスポットを好む傾向にあるそうです。日本の田舎を好み、2回目以降来日する台湾人に人気なのは秋田県!温泉、秋田犬、紅葉の美しい渓谷などを観光するんだとか。温泉に行くことを楽しみにしている訪日台湾人も多いです。
以前はツアー旅行に多くの需要がありましたが、近年ではブログ、SNS、ユーチューブからの情報を元に、個人手配する傾向にあるようです。
地方によっては、情報も多く、東京からのアクセスもよい所もあるので、リピーター訪日台湾人の需要は高くなります。逆に、都市部の観光にはリピーター訪日台湾人の需要はあまり多くない。といえます。また日本のテレビ番組をリアルタイム見ているため、日本のエンターテイメントに対しても敏感でつい最近流行りだしたばかりの飲食店や限定イベントを体験するために来日する人もいるそうです。
質がよく、低価格の衣料品・健康グッズ・トイレタリー製品は購入率トップで、これらの品ぞろえが豊富なドン・キホーテが台湾人に人気なこともうなずけます。日本のグルメも好きでその中でも特に牛肉に目がなく,訪日した際には必ずと言ってよいほど焼き肉に行くんだとか。
訪日台湾人観光客のインバウンドデータ
訪日台湾人を男女別に見ますと、男性が44.0%、女性が56.0%と、女性が多くなっています。男女共に最も多い年齢層は30〜39歳で、男性では全体の14.2%を占め、女性では18.4%を占めます。
2018年のデータ観光庁のデータによると、訪日台湾人リピート率は、全体の80%が2回目以上となっており、20回以上という訪日台湾人も全体の5.2%を占めています。
訪日台湾人の訪日者数
コロナが始まる2019年まで、訪日台湾人の数は増え続け15年の367万人から19年は489万人とその数は右肩上がりに増え続けています。20年の台湾の人口からすると約20%の人が日本へ来たことがある計算になります。
コロナが始まり入国規制がされた20年、21年の訪日台湾人の数はがくんと下がり、21年に至っては5千人とかなりの減少を見せましたが、入国規制が緩和された22年は383万人と回復傾向にあります。
また日本台湾交流協会の調査によるとそれまで「台湾を除いて最も好きな国」1位にシンガポールを上げていましたが日本がコロナワクチンを提供したこともあり22年の調査ではシンガポールを抜き日本が1位に選ばれています。
訪日台湾人の消費額
台湾旅行客の日本滞在中の1人当たりの消費額は2015年から2019年まで約13万円弱。
宿泊費以外での支出1位はショッピングでその中でもドラッグストアでの買い物が一番多く、特に医薬品(解熱鎮痛剤)や化粧品(コスパのよいプチプラコスメや限定品)、お菓子(ポッキーやキットカット、グミ)などが人気。訪日を知った家族や友人に「日本で買ってきてほしいものリスト」を渡されることもあるのだとか。支出2位は飲食費となっており菓子類等、日本の食べ物が好きな様子があらわれている。
買い物の場所別でみると1位ドラッグストア、2位コンビニエンスストア、3位スーパーマーケットとなっておりこの結果からも日本慣れしている様子がうかがえるが訪日台湾人に行った満足度調査では「日本は安全で親切な人が多い」との意見から安心して買い物に行ける環境であることも台湾人の消費を加速させる要因であるかもしれません。
ちなみに新型コロナウイルスの渡航制限による「日本ロス」により、日本そっくりスポットが台湾で誕生しました。
2021年1月19日には、「ドン・キホーテ」の台湾1号店となる「DON DON DONKI 西門店」が台北市西門町にオープンしました。
オープン当日は午前10時の開店前から500人以上が行列を作る人気ぶりで、夜中まで並ぶ人が絶えず、台湾現地報道によればレジまで5時間かかることもあったということです。
訪日台湾人の都道府県別訪問率
訪日台湾人の都道府県別訪問地は東京都、大阪府、千葉県の順に多いようです。東京は空港があるので必然的に立ち寄る回数が多い傾向にありますが、他の訪日外国人に比べると訪問率は低く、リピーターの多い台湾人は地方へも観光に行っているようです。
アジア・インタラクション・サポートが行った「台湾人の訪日旅行に関する意向調査」によると「人気の観光スポット」1位 富士山、2位 東京ディズニーリゾート、3位 ユニバーサル・スタジオ・ジャパンとなっており、他にも立山黒部アルペンルートや銀山温泉、浅草寺などもあり日本の自然や古くからある文化的な要素を体験する傾向にあります。
台湾には日本のような四季がないため季節を楽しむことも好きなようです。
「人気の都道府県ランキング」を見ると1位 北海道、2位 東京、3位 京都、4位 大阪となっており他にも千葉県がランクインしていることから全体的に関東圏の主要観光スポットを回る傾向にあります。
また、日本に訪れたことのあるリピーター訪日台湾人は、青森県、秋田県、宮城県などの東北地方や、香川県、徳島県などの四国地方へ訪れる傾向があるようです。
これは、東京からのアクセスがしやすい場所もありますが、地方と台湾を結ぶチャーター便が増えたことも影響しているようです。
訪日台湾人の訪日回数
「JNTO訪日旅行データハンドブック2022」によると18年までの台湾人の訪日回数は1~2回が大多数を占めているが、訪日者数がピークを迎えた19年だけを見ると1位 6~9回、2位 2回目、3位 1回目となっており他の訪日外国人と比べると圧倒的にリピーターが多いことが窺える。
22年の数字を見ても1位に2〜3回、2位も10〜19回となっており、往復国際便も増え、この先もリピーターが増えることが期待されます。
訪日台湾人の旅行形態
16年~19年までの傾向としては1位 個別手配 62.9%、2位 団体ツアーに参加 27.5%、
3位 個人旅行向け パッケージ 商品を利用9.6% となっており14年からの数値を見ると個別手配が年々増加傾向にあります。
予約はウェブサイトを使い、情報収集には個人のブログ、SNSやユーチューブを主に使用してはいるが友人知人から得る情報も多いようです。
訪日台湾人の滞在日数
訪日台湾人の滞在日数は4〜6日間が最多となっており11年からその比率はほぼ変わっていません。
次いで多いのは7〜13日間となっておりこちらも他の訪日外国人とあまり変わりません。
訪日台湾人に人気の季節・時期
人気の季節・時期としては、4月から7月にかけて安定した訪日数を持っており17年〜19年のあいだ変わっていません。なぜこの時期が人気かというと、旅行業界全体としていわゆる閑散期にあたり、航空券やホテル宿泊費も安くなるからです。また、閑散期といえど、この時期日本はちょうど桜や、新緑を楽しめる温暖で気候の良い時期です。
観光庁が2018年に行った訪日外国人消費動向調査によると、「今回の訪日で式を体感した」と答えた訪日台湾人は17.7%、「次の訪日は四季の体感を目的にしたい」と答えた訪日台湾人は29.8%となり、同様のアンケートに答えた全国籍の平均よりも多く、日本の季節に対して関心が高いことが分かりました。
訪日台湾人は食やショッピング、観光地巡りだけでなく、様々な日本の季節を体感するために、休日を関係なく日本を訪れている傾向があるようです。
2022年日本と台湾の入国規制状況
新型コロナウイルス感染症に関する水際対策に関わる措置については、外務省より以下のようになっています。2022年12月30日午前0時(日本時間)以降に入国されるかたについて、中国(香港、マカオを除く)に渡航歴(7日以内)のある全ての方及び中国(香港、マカオを除く)からの直行便で入国される方については全員入国時検査を実施することになりました。
さらに、令和5年1月8日午前0時(日本時間)以降、中国(香港・マカオを除く)からの直行旅客便での入国者について、出国前72時間以内に受けた検査の陰性証明書の提出を求めることとなりました。
令和4年10月11日午前0時(日本時間)より、オミクロン株(B.1.1.529系統の変異株)が支配的となっている国・地域(「水際対策強化に係る新たな措置(27)」(令和4年2月24日)における「オミクロン株以外の変異株が支配的となっていることが確認されている国・地域」以外の国・地域)からの全ての帰国者・入国者について、原則として、入国時検査を実施せず、入国後の自宅又は宿泊施設での待機、待機期間中のフォローアップ、公共交通機関不使用等を求めないこととなりました。また、全ての帰国者・入国者について、世界保健機関(WHO)の緊急使用リストに掲載されているワクチンの接種証明書(3回)または、出国前72時間以内に受けた検査の陰性証明書のいずれかの提出が求められるようになりました。
https://www.mofa.go.jp/mofaj/ca/fna/page4_005130.html
新型コロナの感染法上の位置づけについて、政府は2023年5月8日に季節性インフルエンザと同じ「5類」に移行する方針を正式に決めました。5類に見直すことにより、3回のワクチン接種の証明書などを求める措置も取れなくなります。日本の水際対策は変動が激しいので、事前に確認する必要があります。
入国規制緩和により「インバウンド需要」回復の兆し
長らくの入国規制制限から解放され、再び日本を訪れる台湾人がこれから増えることが期待できます。SNSやブログ、ユーチューブといった情報源から、リピーターが訪れる観光地はますます多様化し、都市部だけではなく、地方にもインバウンド需要は増えるでしょう。しかし、その需要に対し地方の情報収集は難しく、個人旅行では行きたくても行けない。ということが課題となっています。
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BEENOS Travel代表取締役社長。台湾最大級のインバウンドメディア「トラベルバー」の事業責任者を務める。デプスインタビューやアンケートを活用して収集した豊富な情報を基に、最新かつ詳細な台湾情報を世界に発信している。自治体、宿泊事業者、商業施設、飲食店と台湾インバウンド関連の業務を行い、台湾の魅力を広く紹介する活動に従事している。