観光庁の補助金一覧と役割について紹介

日本では、高付加価値旅行者の割合が低く、消費額が伸び悩んでいたり、地方にインバウンドの効果が及びにくいことが課題として挙げられます。高付加価値旅行者の誘客に取り組んでいる事業者のなかには、以下のような疑問を持っている方も多いでしょう。

  • なぜ日本には高付加価値旅行者が少ないのか
  • 高付加価値旅行を誘客するには、何をするべきか知りたい
  • 高付加価値旅行を誘客するために活用できる補助金を知りたい

本記事では、高付加価値旅行を誘客するために役立つ内容を紹介します。高付加価値旅行をどのように誘客しようかと悩んでいる事業者は、ぜひ参考にしてくださいね。

目次

高付加価値旅行者誘致に関して日観光が抱える課題と原因

最初に紹介するのは、高付加価値旅行者を誘致するにあたり、訪日観光が抱える課題と原因です。以下の5点を紹介します。

  • 地方自治体の観光スポットの認知度が低い
  • 高付加価値層のニーズにこたえきれていない
  • 交通手段の不便さ
  • インバウンド人材の不足
  • 海外の高付加価値旅行者誘致人脈のコネクション不足

日本がインバウンド誘客するうえで抱えている課題を把握しましょう。

地方自治体の観光スポットの認知度が低い

日本を訪れる高付加価値旅行者の多くは、東京や大阪などの主要都市に集中しています。高付加価値旅行者が訪れる地域に偏りが出てしまうのは、地方自治体にある観光スポットの認緯度が低いからだと考えられています。地方を訪問する高付加価値旅行者を増加させるためには、魅力あるコンテンツを提供しなければいけません。

高付加価値層のニーズにこたえきれていない

高付加価値旅行者を誘致するためには、希少で高度な体験価値やラグジュアリーな宿泊施設が欠かせません。高付加価値旅行者を満足させるようなホスピタリティや旅行者のニーズに対応できる柔軟性が求められます。

ほかにも高付加価値旅行者の認知度や関心を高める情報だけではなく、実際に予約へつながるような情報発信を行う必要があります。高付加価値旅行者はトレンドに敏感な傾向があるため、情報を発信する側は世界的なトレンドを把握し、多彩なアプローチ方法を立案する力が求められるでしょう。

交通手段の不便さ

交通手段が不便であることも訪日観光が抱える課題のひとつです。出入国時における利便性を高めるのはもちろん、国内移動の交通手段に関する不便さも解消する必要があります。地方では、タクシーやハイヤーが不足していることが課題として挙げられています。

プライベートジェットやスーパーヨットの受け入れ環境が不十分であることや、ヘリポートの観光利用の自由度が低いことも課題として挙げられます。移動手段の利便性や快適さを高めるだけではなく、交通手段と観光をつなげる工夫も併せて求められるでしょう。

インバウンド人材の不足

高付加価値なインバウンド観光地をつくるためには、高付加価値観光者のニーズを理解し、対応できる人材を確保することも必要不可欠です。高付加価値旅行者が満足するようなホスピタリティやガイドを提供できる人材も必要となるでしょう。

地方では高付加価値観光客に対応できる人材が不足しています。今後は人材育成や獲得だけではなく、高付加価値なインバウンド観光地づくりや送客に必要な知識や人脈を持っている人材と地方が連携できる取り組みが求められるでしょう。

海外の高付加価値旅行者誘致人脈のコネクション不足

高付加価値旅行者を誘致するためには、高付加価値旅行者のニーズに適した効率的な情報発信やアプローチが欠かせません。現状では、高付加価値旅行者に対応できる人材が国内に点在し、個々にセールスを行っている状態です。今後は国内の関係者が連携を取り、観光業界全体で高付加価値なインバウンド観光地づくりを行う必要があります。

ンバウンドの大きな潮流「高付加価値旅行者」を掴もう

次に紹介するのは、インバウンドの大きな潮流である高付加価値旅行者をつかむ方法です。問題点を解消し、高付加価値旅行者を誘客するためには、どのような方法があるのか、以下の内容に沿って紹介します。

  • 知的好奇心が旺盛な高付加価値旅行者
  • 高付加価値旅行に関する観光庁の取り組みと役割
  • 海外旅行会社との「繋がり」を大切にする

それでは順にみていきましょう。

知的好奇心が旺盛な高付加価値旅行者

高付加価値旅行者は訪日旅行1回当たりの総消費額が1人100万円以上の旅行者と定義されています。高付加価値旅行は、単純に高額消費をすることではないと考えられ、異文化に浸ることや日本食を堪能すること、美しい自然を見てリラックスするなどの「旅行の意味」がより強く求められる傾向があります。

「旅行する意味」には、利己的な視点と利他的な視点があり、以下のような違いがあります。

  • 利己的な視点・・・旅行することに学びを求めることや、自分の内面を豊かにする体験・経験を期待すること
  • 利他的な視点・・・訪問先の環境の改善や、社会・文化の発展に寄与することを重視する

高付加価値旅行者は、「利他的な視点」を求める傾向があります。日ごろから慈善活動や社会に対するインパクトへの感度・関心が高く、旅行に対しても同様に能動的になれるものを求める傾向があります。

利他的な視点を含んだ旅を求めることは、必然的に訪問地の歴史や文化の成り立ち、自然との関わり、文化や自然を守る人々の取り組みを深く知り、共感することにつながるでしょう。

一般に高付加価値旅行にはストーリーが必要で、高付加価値旅行者は知的好奇心が強いと言われます。高付加価値旅行者は、美しく造作された完成形や表面的なプレゼンテーションでは満足せず、完成までのプロセスを知りたがる傾向があります。なぜ文化が生まれたのかを知り、実際に体験したうえで、文化を担う人々に会って話を聞きたがります。

ストーリーがあり、知的好奇心を満足させる旅行を実現するためには、地域のことを熟知した人材によるコンサルや特別な手配が必要となります。結果的に、高付加価値旅行は高額消費につながりやすくなるのです。

高付加価値旅行に関する観光庁の取り組みと役割

観光庁が所管する独立行政法人日本政府観光局(JNTO)が高付加価値旅行への取り組みを本格的に始めたのは2017年ごろになります。2017年以前にも、ラグジュアリーに特化したグローバルの商談会に出展を行っていましたが、欧米豪市場を対象に調査を行った結果、日本は世界の高付加価値旅行者をほとんど獲得できていないという現実を目の当たりにしました。

日本では海外の旅行会社や個人から依頼を受けて旅程を作成、手配する旅行会社であるDMCや高付加価値旅行に関するコンテンツは存在していましたが、日本国内の担い手不足により、市場としてはまだ大きくありませんでした。

本格的に高付加価値旅行への取り組みを始めて以降、高付加価値旅行向けの訴求コンテンツを全国から収集し、プロモーション用のウェブサイトの整備や商談会、旅行会社向けファムトリップの実施などが行われました。

観光庁では、2021年に「地方における高付加価値なインバウンド観光地づくり検討委員会」を設置し、国としての取り組みの方向性等を記載したアクションプランを策定しました。訪日旅行における消費単価が高い高付加価値旅行者を地方へ誘客するため、モデル観光地を全国11か所に選定し、高付加価値な宿泊施設整備、観光資源の発掘・磨き上げ、ガイド等の人材育成の取り組みを総合的に推進するための施策を行っていくとしています。

海外旅行会社との「繋がり」を大切にする

魅力的なコンテンツを策定しても、手配できる人がいなければ提供できません。コンテンツを策定するだけではなく、流通に乗せることが大事です。高付加価値旅行者が多いとされる欧米豪からのインバウンドは、旅行会社を通じて訪日旅行を手配する傾向があります。

魅力的なコンテンツを策定する地元の旅行会社や、旅行業ライセンスを有する観光協会等が、海外の旅行会社を顧客に持つDMCの窓口となり、手配の調整などを行う体制を整える必要があるでしょう。コンテンツを造成する際は、流通・販路も重要な要素としてセットで考える必要があります。

人と人との信頼関係を構築することも大切なことです。海外の旅行会社やDMCが、インターネット上に掲載されている情報だけで旅行の手配をすることはできません。信頼関係が構築できていれば、海外の旅行会社やDMCは、安心して自らの顧客を任せられるため、販路の拡大につながるでしょう。高付加価値旅行の普及のためには、「繋がり」が大切といえます。

高付加価値旅行者誘客に向けての課題を解決する補助金一覧

高付加価値旅行者を誘客するためには、現状抱えている課題を解決する必要があります。しかし、費用がかかることであきらめてしまう事業者も多いでしょう。本章では、課題解決に役立つ補助金を紹介します。以下の内容に沿って紹介します。

  • [3] 別な体験の提供等によるインバウンド消費の拡大・質向上推進事業
  • 地域観光新発見事業
  • 観光地・観光産業における人材不足対策事業
  • 宿泊施設サステナビリティ強化支援事業
  • ブルーツーリズム推進支援事業
  • 地域一体となった観光地・観光産業の再生・高付加価値化

それでは順に紹介します。

別な体験の提供等によるインバウンド消費の拡大・質向上推進事業

早期にインバウンド消費額5兆円を達成し、1人当たり消費額25万円を目指すと同時に、日本の魅力を世界中に発信・訪日誘客することです。さらに地方へインバウンドを誘客し、地方経済の発展を目指すことを目的としています。

対象者

対象者は以下の通りです。

  • 民間事業者
  • 地方公共団体
  • DMO

事業内容

事業内容は以下の通りです。

  • 日本が誇る観光資源である自然や文化、食、スポーツ等を、早朝夜間や未公開・非混雑エリア等の活用と組み合わせ、期間限定の特別な体験として提供する。
  • 地方の自然・伝統文化活用、食の地産地消、地域人材の活用等を奨励し、付加価値が高く、地域の目玉となる様々な資源を集約した「地方プレミアム体験コンテンツ」の創出を促進する。
  • 海外情報発信の観点から、海外旅行博等における訪日イベントを実施する。

期間限定の特別な体験の例としては、三の丸尚蔵館で学芸員解説付き貸し切り特別ツアーを開催することや、東京国立博物館で夜間特別開館による音楽会の開催と日本食提供を行うことがあります。文化的価値の高い施設を夜間開放することや、立ち入り禁止区域の特別ツアー、訪日イベントを海外で開催することにより、特別な体験をインバウンド観光客に提供できます。

補助金額

(1)国・地方型(直轄事業)・・・上限8,000万円(最低事業費:3,000万円)

(2)民間企業型(補助事業)

 ①インバウンド規模3,000名以上・・・1,500万円定額1,500~6,000万円まで補助率1/2(最低事業費:2,500万円)

 ②高付加価値・・・1,000万円定額1,000~3,000万円まで補助率1/2(最低事業費:1,500万円)(単価3倍以上)

応募の詳細

申請方法やその他詳細は、観光庁国際観光課・観光資源課に問い合わせください。

地域観光新発見事業

観光による経済効果を地方に波及するには、地域間競争力を高め、地方誘客を進める必要があります。埋もれている地域の観光資源を活用し、多様な観光コンテンツを造成するとともに、販路開拓や情報発信を行うことで、地方への継続的な訪問を促進します。

対象者

対象者は以下の通りです。

  • 民間事業者
  • 地方公共団体
  • DMO

事業内容

地域の観光資源を活用した地方誘客に資する観光コンテンツについて、十分なマーケティングデータを活かした磨き上げから、適時適切な誘客につながる販路開拓及び情報発信の一貫した支援を実施します。

具体的な支援内容は以下の通りです。

  • 専門家の意見を踏まえた観光コンテンツの磨き上げ・商品化
  • 新たな観光コンテンツのオンライン等を活用した国内外への販路開拓及び情報発信

補助金額

事業形態:間接補助事業・・・400万円まで定額、400万円を超える部分については補助率1/2(補助上限:1,250万円、最低事業費:600万円)

応募の詳細

申請方法やその他詳細は、観光庁観光地域振興部観光資源課新コンテンツ開発推進室に問い合わせてください。

観光地・観光産業における人材不足対策事業

宿泊業は観光需要の急速な回復により人手不足が問題となっています。インバウンドによる経済効果を最大限にするために、人手不足の解消が急務です。採用活動支援や設備投資支援などの短期的な対策、外国人材の活用などの中長期的な対策を総合的に実施していきます。

対象者

民間事業者

事業内容

①人材確保支援

大型の合同企業説明会等における宿泊業の魅力発信イベントの実施等、事業者の採用活動を全面的に支援します。

②人材活用の高度化に向けた設備投資支援

人手をかけるべき業務に人材を集中投下し、サービス水準向上・賃上げを実現するため、スマートチェックイン・アウト、配膳・清掃等ロボット、チャットボット、予約等管理システム(PMS)等の設備投資を補助します。

③外国語人材の確保

特定技能試験の受験者を増やすためのジョブフェア等のPR活動、試験合格者の雇用のためにマッチングイベントを開催、観光地における外国語対応人材の確保等を行います。

補助金額

事業形態

①・③直轄事業

②間接補助事業(補助上限500万円、補助率1/2)

応募の詳細

令和6年3月以降、公募内容等の詳細が決まり次第、別途観光庁ウェブサイトにて案内がある予定です。

宿泊施設サステナビリティ強化支援事業

訪日外国人旅行者を中心にサステナブルな旅行や宿泊施設の選択志向が年々高まっています。日本を旅行先として選んでもらうため、宿泊施設のサステナビリティ強化が必要となります。本事業は、旅館・ホテル等の宿泊施設が実施するサステナビリティの向上に関する取り組みを支援していきます。

対象者

民間事業者

事業内容

宿泊施設における省エネ型ボイラー、太陽光発電、省エネ型空調等の省エネ設備等の導入支援

補助金額

事業形態:間接補助事業・・・補助上限1,000万円、補助率1/2

応募の詳細

2024年3月8日現在、公募は行われていませんが、今後再開する可能性があります。

ブルーツーリズム推進支援事業

ALPS処理水の海洋放出による風評への対策として、海の魅力を高めるブルーツーリズムを推進し、国内外からの誘客と観光客の定着を図ることが目的です。公募した地域の関係者による合意を得て策定したブルーツーリズ推進計画を、別添様式により観光庁へ提出する必要があります。事業計画には、本事業の目的である観光地域づくりを通じて、海の魅力を高める取り組みを必ず記載しなければなりません。海の魅力を高める取り組みには、海に入らないコンテンツも対象としています。

申請対象者

岩手県、宮城県、福島県および茨城県における市町村、観光協会および観光地域づくり法人、DMO

事業内容

①海水浴場等の受け入れ環境整備

②海の魅力を体験できるコンテンツの充実

③海にフォーカスしたプロモーション

④ブルーフラッグ認証の取得に向けた取り組み

補助金額

補助率・・・8/10

補助上限・・・3,000万円(海水浴場等の受け入れ環境における施設・設備の改修を含む場合は、5,000万円を上限の目安とする。)

応募の詳細

申請方法やその他詳細は、観光庁HPで確認できます。

地域一体となった観光地・観光産業の再生・高付加価値化

観光地は近年、観光地全体の活力低下(入込客数の減少、収益の低下、投資の停滞による施設の陳腐化や廃屋等の放置)といった課題に直面しています。本事業では、地域全体の魅力と収益力の向上を図り、持続可能な観光地域づくりを推進させます。

対象者

対象者は以下の通りです。

  • 民間事業者
  • 都道府県
  • 市町村
  • DMO等

事業内容

①宿泊施設の高付加価値化

②観光施設の改修等

③廃屋撤去

④面的DX化

補助金額

①補助率1/2、⅔

②補助率1/2

③補助率1/2

④補助率1/2

応募の詳細

現在公募は行っていませんが、今後再開する可能性があります。観光庁参事官(産業競争力強化)に問い合わせましょう。

まとめ

高付加価値旅行者を取り込むためには、様々な課題を抱えていることがわかりました。改善すべき点が多いことから、多額の費用が必要となることが見込まれます。費用負担が重いと感じたら、観光庁が交付する補助金の利用を検討しましょう。申請条件などを確認したうえで、申請を行ってくださいね。